クレープ

クレープを食べている。
たぶん、池袋で深酒をした結果終電を逃し、そのまま朝まで騒いだあと、おかしなテンションで池袋を徘徊していた際に買ったクレープ以来ではないかと思う。その時のクレープの味は特に印象に残っていない。

お気に入りのカフェがあって、時たまそこでコーヒーを飲みながら時間を潰す。
そこは、大通りに面したカフェで、ガレージを改装したという店内は、無骨ながらもどことなく洒落っ気が漂う。

そこで月に数回クレープを出す日があるというのは認識していたが、特にクレープが好きなわけでもないので気にしていなかった。クレープを出すという情報もInstagramで目にしただけで、実際に遭遇したことはなかった。

今日、いつもどおり時間を潰すためにそのカフェに入り、いつもどおりドリップコーヒーを頼む。支払いを済ませた際、横にクレープメニューなるものが置かれていることに気づく。それを見ても特に高揚感があるわけではなく、ただ昼食をとっていなかったな、とか、とはいえフードメニューのカレーを食べられるほどはお腹すいていないな、とか、そんな事を考えて、自然にクレープを追加オーダーした。選んだのは店名を冠した最もオーソドックスなクレープ。370円。

支払いを済ませると、店内の端っこにある小さなブースでクレープが作られる。肌色の液体を円状の熱した鉄板の上に垂らし、地面を均すのにつかうトンボを小さくしたようなもので要領よく広げていく。長い独特な形をしたヘラでこれまた要領よくひっくり返し、少し熱したあとに鉄板から取り上げ、生地にクリームを絞りトッピングを載せていく。
正直、クレープの作り方なんてほとんど見たことなかったか、もしくは忘れていたので、僕が想像していたクレープの作成風景よりも遥かに洗練されていて、しばらく目を奪われていた。

あれよあれよという間にクレープは完成し、円錐状の紙袋に収まった状態で手元に運ばれてくる。中身を袋から繰り出し、ひとかじり。
想像通りの生地の食感、温度。数年前に食べたクレープの味を少しだけ思い出す。もう一口。砂糖を噛んだような食感に生地に比べ少し冷たいクリームの甘い味。遅れてチョコレートソースのような味がやってきた。二口目からは想像していたよりも美味しく感じた。
そのまま、手を止めることなく食べ続ける。時々コーヒーゼリーにぶつかってぷるぷるとした食感と味を感じた。

完食。そんなにお腹にたまるものでもないので、満腹感はないけれど、そこまでお腹が減っていなかった僕にはちょうどよかった。
また遭遇したら食べてもいいな、と思う。ただ、なんとなく、わざわざ意識してクレープ提供日に店に足を運ぶことはしないだろうな、とも思う。僕の中の格好つけな心が強がっているのだろうけれど。